みなさん、妊孕性(にんようせい)ってご存知ですか?この頃ニュースでも良く見かけるようになりました。妊孕性とは赤ちゃんを授かる力のことで、がん治療の後でも、この妊孕性を温存してQOL(生活の質)を保とうとする試みが各地で展開されています。
私の場合、発病が40歳台であったこと、これから子どもを産む予定はなかったので、抗がん剤治療にそのまま突入しました。しかし思えばあの頃、医師からこの先に待ち構える不妊(閉経)の可能性についての説明は一切ありませんでした。まぁ歳のせいかもしれませんが、万が一の可能性も考え言ってくれても良かったのではと思います。日本ではがん治療において、がんを治すことが最優先であり、最近はQOLの向上も重きを置かれていますがまだまだな面があります。果たして若い世代や未婚の30~40歳台の患者さんに対して充分な説明が行き届いているのでしょうか?
乳がんの抗がん剤治療で不妊の要因となるものは、アルキル化剤であるシクロホスファミドです。私はFECでこの薬にて治療を受け、始まってから間もなく生理がピタッと止まりそのままです。通常ではほぼ考えられないスピードで閉経状態になりました。次回、詳しい血液検査で結果が出ますが、出る前から明らかです。
若い世代でのちの妊娠の可能性を断ち切らないため、抗がん剤治療を断ったり、無治療を選択したりというのは実際あるようです。でも治療前に卵子を凍結保存しておいたり、生殖機能を残す治療方法を選択するなど方法はあります。ですが、日本では産婦人科医とがん治療医との連携がまだ不十分で、何も知らされないまま、後から子どもができないという状態に置かれてしまうということも。
卵子の凍結保存もおよそ30万以上かかったり、保存更新でも数万円かかるなど経済的負担が大きいです。早急に補助金などの対策がなされればいいのですが、まだまだです。また卵子採取の際にホルモン剤を加えて投与するなど、女性ホルモン受容性陽性の患者さんには頭を抱える問題でもあります。ここでがん治療医と産婦人科医でうまく連携して、治療の進め方、採卵や治療後の妊娠の時期の調整がうまくいけば良いのです。アメリカでは、この連携が上手くいくようにコーディネーターが活躍し、がん治療を受ける患者さんがタイミングを逃すことなく、妊孕性も保ちながらがん治療をしっかり進めています。
日本でも岐阜や静岡、兵庫ほかでこの連携ネットワークを構築しており、これからもっとより良くなっていくはずです。以下のサイトをご覧になると、専門的な資料がたくさんあります。
特定非営利活動法人日本がん・生殖医療学会さんのサイト
がんと診断された直後は、落ち込んだりして、先のことまで考えられなくなってしまいますが、本人で気づいたり、まわりの人や医師によって広く周知され、治療によって奪われてしまうものが少しでも減りますように。
ここまで読んでくださった あなたに感謝。<(_ _)>